回路設計ミスまとめ
この記事は
- 学ロボ Advent Calendar 2022
- UEC 2 Advent Calendar 2022
の18日目の記事となります.
1. 自己紹介
どうも,pizac(ぴざっく)と申します.電気通信大学ロボメカ工房NHK部隊というサークルで,回路と制御を担当しているB3です.ロボメカ工房については,後輩のLazuly(らずり)の記事が参考になると思います.らずり君真面目すぎないか?凄すぎる.
ロボコンでの設計の話 - らずりのひとりごと - らずりのひとりごと
そもそもB2まで制御班でしたが,らずりが作ったMD(モーターを制御する回路)が動かないということで,手伝っているうちに回路班になってました.MDを設計開始した時期が昨年の同じ時期なので,回路班歴は1年となります.最近は,マイコンと周辺回路が一体となった回路を作っているため,制御班の知識がかなり役に立っています.制御班の人は回路を作り,回路班の人は制御をしましょう.実際両方兼任すると地獄だけどね!
さて現在は,後輩の協力もありますが,回路を6種類設計製作,ROSや組み込みなど,ほとんどの制御システムの設計製作してます.そこで気をつけたいのが設計ミスです.ソフトウェアの場合,後から変更が効くのでどうでもいいですが,回路の場合,プリント基板を再発注することとなり,費用や時間がかさみます.というか,特に何も考えずに設計すると大抵動きません.そこで,今年と昨年に起きたミスをまとめてみました.ちなみに,Kicad6で設計しています.U buntuのKicad6が軽量でいいゾ〜
2. 回路図設計で起きたミス
2-1. ネットからパクってきた回路が動かない
一番やってはいけないミスです(昨年MDはこれで動かなかった).ネットに転がっている回路図には3種類あると考えています.
- 個人で製作した回路図
- オープンソースの回路図
- リファレンスボードの回路図
1や2は逆に動いたらラッキーです(下で回路図を貼っていますが,絶対に参考にしないでください).というのも,そもそも間違っていたり,同じ回路を設計することができないためです.基本3を参考にしましょう.例えば,今は入手できませんが,回路班が大好きなゲトドラA3921は公式サイトの一番下の方にリファレンスボードの回路図が掲載されています.
Allegro MicroSystems - A3921 自動車用フル ブリッジ MOSFET ドライバ
STMマイコンを利用している場合は,Nucleoの回路図が参考になります.
MDを作る場合,ゲートドライバICのリファレンスボード参考にすると良いです.レイアウトもある場合があります.プロが作った基板なので,真似するだけで回路スキルが上達します.Schematic(回路図),BOM(部品表),Layoutは必ず確認しましょう.
2-2. シンボルとフットプリントが一致しない
例えば,上の回路図です.NJM7805L05のシンボルがKicadになく,別のシンボルにフットプリントを貼ったため起こりました.このICは1ピンがVoutでした.ICを入れた場合は必ずピン番号をデータシートで確認しましょう.これは別の話ですが,コンデンサは耐電圧とサイズ(DCバイアス特性に影響)は記入するとミスが減ります.
2-3. 電源が違う
これはうっかりしてました.上の回路図の赤丸で示した+5VAはVCCが正解でした.電源を複数使う場合には,必ず気をつけましょう.これも別の話ですが,FF1,FF2はトランジスタ挟むか抵抗を大きくした方がいいですね.A3921のV5は非常に貧弱です.
3. PCB設計で起きたミス
3-1. 部品間隔が狭すぎる
人間が実装する場合は,必ず部品の間隔を考慮しましょう.おすすめは,グリッドを0.25mmにして,Courtyard(ピンク枠)を2グリッド分離すことです.部品どうしは1mmほど空き,ピンセット(TS-15)が余裕で入るようになります.
大量の部品が並んでいますが,実装できます.ムズいけど!
3-2. ノイズ対策がされていない
ノイズ対策.COMさんがわかりやすいです.学ロボ基板でノイズがシビアになる部分は少ないですが,対策しないよりかはマシです.シミュレーションとかは面倒なので,対策を出来る限りして,実機で動かなかったときは考えるで良いと思います.
ノイズ対策.COM|プリント基板の回路設計者・開発者のための技術サイト
3-3. 基板の製造許容寸法(Capabilities)を考慮していない
私は小さい基板を作るのが好きなんですが,プリント基板には製造限界があります.発注先のサイトに必ず掲載されているので確認しましょう.
PCB Manufacturing & Assembly Capabilities - JLCPCB
また,Kicad6ではデザインルールを設定してチェックすることができます.参考までに,私がJLCPCBさんで発注した際のデザインルールを掲載しておきます.動いたので問題無いと思いますが,何か問題点があれば教えてほしいです.
4. あとがき
近年は某マスモーターの登場により,回路開発は必要なくなってきます.私はただの自己満足でやっているのでほぼ自腹です.しかし,回路を製作してみるとわかるのですが,たとえ既成品に性能が劣っていても回路が動いたときの感動は大きいので,この文化が無くなるのはとても残念に感じます.基板への愛着がわきすぎて美少女に見えたり声が聞こえます!
学ロボは結果が全てではないと思っていて,大学生にしかできないものづくりを楽しむのが目的だと思っています.実際,同年代の人が大人数集まって,社会の何の役にもたたないくそでかロボットを作るのは,これが最後だと思っています.ぜひ,基板を作って友達やTwitterに自慢しましょう.私が作った回路達の公開は大会後になりそうです.大量にミスがあって現在修正中です.私のために一生懸命頑張る基板達もかわいいです!
最後になりますが,ここまで閲覧いただきありがとうございました.てか,基板できたら,基板愛を語る記事でも書こうかな.今年はマジでヤバイ基板ができてる!